陽は沈み、闇がたちこめているそんな時間に､旅人風の男が一人璃月港郊外の森を歩いていた｡

「ねぇそこの人､あなた一体何者なの？」

その背後から忽然と古風な服を着た少女が現れ､男に話しかける｡

「私は見ての通り旅人ですよ｡」

男は立ち止まり､ゆっくりと振り向く｡

「そういう事じゃなくてさ｡その体…あなたの物じゃないでしょう？大方元の体はとうに失って､何らかの方法で他人の体を奪いこの世に留まっている…そんなところかな｡」

「……心外ですね､それはきっと勘違いでしょう､私はただの旅人です…仮にそうだとして､あなたは私をどうするつもりでしょうか？」

「私は普段生死と関わる仕事をしててね､あなたにような生死の戒律に逆らう人を見ると放っておけないの｡今から少し大人しくしてくれない？あの世に送ってあげるから｡」

「そうですか､私とは関係無いようですね。」

「……私の目は誤魔化せないわ。」

少女は背負っていた槍を握りしめ､その切っ先を男に突きつける｡
男は両手を上げ驚いた素振りを見せる｡しばしの沈黙後､少女が顔色を変えずに自分を睨んでいるのを見て､男はため息をついた｡

「はぁ……どうやら君は厄介な人のようだ…じゃあ仕方ねぇな！」

男は咄嗟に腰に下げた剣を抜き､少女に斬りかかる｡戦いの幕は切って落とされた｡

「《旋風切り》！！」

剣の心得があるらしき男は重く鋭い剣技を少女に披露する､しかし少女は器用な動きでそれを全て躱していく｡

「そんなの当たらないよ！」

「これでもくらえ！」

男は剣を大きく振りかぶる､だが少女はその隙を突き､男をすり抜けるかのように後ろへ回り込み､逆に鮮やかな槍の連撃を放つ｡

「ぐあっ！」

男がよろめいた機を逃さず､少女は元素の力を手中に込める｡

「《燎原の蝶》！！」

元素の爆発と共に､少女の手の中から火の元素で形成された蝶が大量に飛び出し､辺りを焼き尽くす｡
少女の手加減があってか､男はボロボロになったものの何とか豪火の中を生きながらえた｡

「くっ…まさか火の元素使いだったとはな。」

小競り合いの結果､男は満身創痍になったの対し少女の方はほとんど無傷のままである｡

「実力の差ははっきりしたでしょ､それじゃ負けを認めてくれないかな？」

「ふん…嬢ちゃんは確かに俺より強い。だがどうして俺を直接焼き殺さなかった？」

「あなたみたいな人でも責任を持ってあの世へ送ってあげたいからね｡大人しくしてくれるならせめて佳日を選んで送ってあげるわ｡」

「変な所で拘ってんな､嬢ちゃん一体何者なんだい？」

「私は往生堂七十七代目堂主、胡桃よ。」

「なるほど…あの往生堂の…悪いがその好意を受け取るわけにはいかないな。」
「嬢ちゃんが手加減してくれたおかげで時間は十分稼げた､今度は俺が人の体を乗っ取る秘術を見せてやるよ！」

「《霊体解脱》！！」

男が呪文を唱えると怪しげな波動が放たれ､その波動は何と少女の霊体を体の中から弾き出した｡
そして霊体を失った少女の体は力を失い地面へ倒れ込む｡

「なに…これ？私幽霊になってる？」

霊体となった少女はまだ状況を飲み込めておらず､ただプカプカと空中に浮かんでいた｡

「面白いのはここからだぜ！」

そう言った途端､男の腹の中から邪気を纏った霊体が染み出してくる｡それは宙に浮かび上がり､真っ直ぐに少女の体の方へ飛んでいく｡
男の霊体は少女の体にぶつかり､そして侵食するかのようにずぷずぷと音を立て中へと沈んでいき､最後は体の中へ消えていった｡

「私の体…一体何をしたの？」

ありえない出来事に対し､少女の霊体はただ呆然と見ているしかなかった｡
しばらくすると､少女の体は突然と目を開けて､地面に手を付けながらゆっくりと立ち上がった。

「私の体が…勝手に動いてる…！？」

「ん~…成功したみたいだな。女の体を使うのも随分久しぶりだ。」

少女の体は背筋を伸ばすと､手のひらを結んで開いたりするのを何度か繰り返す｡そして品定めをするかの様に全身を見回していった｡
見回すのを終えると､少女の体は自分の霊体へと視線を向けた。

「なるほど､この目は霊的な存在がよく見える｡どうやら最初に俺の正体を当てたのはまぐれじゃないらしいな｡」

「なんの話…？あなたは一体…？まさか…さっきの男！」

少女の体が怪しげに笑う。

「ああそうさ。今嬢ちゃんの体を操っているのは俺だよ。」

「あなたは体の中にいた私を術で弾き出し､空っぽになった私の体に入り込んで､体を乗っ取った！」

「賢いな､大正解だ！正解した褒美にいいことを教えてやるよ､霊体になってから早く肉体に戻らないと二度とこの世に帰って来れなくなるんだぜ｡」

「なら…私の体を返して！」

少女の霊体が自分の体へと漂っていく､だが霊体が体に触れるとそれはただすり抜けるだけで､男の時のように溶け込む事はなかった｡

「どうして…？」

「ぷっ､あはははは､残念だったな｡原則上一つの体には一つの魂しか入り込めないんだ｡」

少女の体は地面に倒れている男に指を差す。

「一応あっちの体はまだ使えるぜ｡それを使ってこの世に戻って来ることは出来るし､このままあの世へ行くのも自由だ｡さて､嬢ちゃんはどっちを選ぶのかな？」

「ぐっ……」

少し迷った末､少女の霊体は男の体に入り込んいき､男の体がふらつきながら立ち上がった｡

「生死の戒律云々言ってたくせに俺の体で復活するとはな､潔く死んでくれると思ったぜ｡」

「うるさい､あなただけはあの世に送ってあげなくちゃいけない｡戒律を乱した罰はその後受けるよ！」

「これまた立派な心がけで｡それで､自分の体を傷つけられるかな？」

男は黙って剣を握り締め､無言で少女に斬りかかる､しかし少女にひらりと躱される。

「おっと､嬢ちゃんの覚悟を疑うべきじゃなかったね｡まあそれでも勝ち目はないんだがな。」

少女は回避すると同時に地面に落ちていた槍を拾い上げ応戦する｡
弱りきった男の剣に当たることもなく､少女は隙きを突いて男に槍の重撃をお見舞いし､地面に叩きつけた｡
そして追い打ちをかけるように男の頭を踏みつけ､嘲り笑う｡

「体本来の能力差､他人の体を扱う事への慣れ具合､それに負った傷…形勢を傾けている要素は最初よりむしろ増えているんだ､嬢ちゃんが勝つ可能性は万が一も無いんだよ。」

「ぐ…あ…」

満身創痍の男はもはや反抗する余力も無く､ただ少女の足下で震えるしかなかった｡

「これで本当に勝負ありだ､それじゃ後始末を始めるか｡体を新調した後は元の体を処分しなくちゃな…そう言えば俺をあの世に送りたいって言ってたよな､俺の体に入った嬢ちゃんが代わりに死んでくれれば丁度いいんじゃないか？」

「う…体が…動けない…」

「最後にこれでも試して見るか。」

元素の力が少女は手の中に集まってゆく…

「あなた…まさか…」

「ああ､嬢ちゃんがさっき使ってきた[[rb:それ > ・・]]さ､上手く扱えるといいけどなっ…そんじゃあばよ､元胡桃ちゃん｡情けを掛けてくれたお礼にせめて苦しまず逝かせてやるよ。」

少女はニコリと笑うと手中から元素の力を解き放つ。

「《燎原の蝶》！！」
…………

人気のない森の中､焼けた平地の上で少女が一人佇んでいた｡
焼けて灰になった男を見て､彼女は満足げに頷く｡

「さてと､元の体も処分したし｡新しい体をじっくり見てみるか。」

月明かりの下､少女は自分の服を乱雑に脱ぎ捨て､白く滑らかな肌を大気に晒していく｡

「この体を奪うのは当初の予定じゃ無かったんだが…まあ､これも悪くない…」

少女は自分の腕を軽く撫でると､両手を胸と秘所に宛がい体を弄り始める｡

「胸は少し慎ましいが…なかなか艶やかな体をしている｡それに…ん…かなり敏感だ…」

少女はいつの間にか喘ぎ始め､手の動きは段々と激しさを増す｡乳房を揉んでいただけの手は胸部の突起をつまむ様になり､秘所へと伸ばした手は恥部から漏れ出した液体を感じ取ると指を二本出し､その中へ出し入れをしていく｡全身から押し寄せる快楽の波を受け､少女その体を反らせた｡

「一番気に入ったのはやっぱり…この体が秘めている強大な力だな､あは､んっ､ああああああ！！」

体を大きく痙攣させると共に､大量の淫水が少女の秘所から吹き出る｡少女は息を荒げ､恍惚とした表情で夜空を見つめ､放心していた｡

「ふ…ふ…あははははは！」

達した余韻が徐々に去っていき､少女はゆっくりと体を起こす｡

「そうだな､次に秘術を使えるのはまだ結構先になるし｡とりあえずは胡桃ちゃんの生活を楽しみながら次の体を物色するか｡」

事を終えた少女は慣れた手付きで服を着付け､地面に落ちていた槍を拾い上げると､夜の闇の中へ歩み消えていった｡

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